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深い青色をした小箱をのせたテーブルを挟み、私と慎は向き合い座っていた。
「見つかっちゃったかあ」
慎はばつが悪そうに、でもどこか照れくさそうに、とにかく色んな感情が混ざったような、変な半笑いを浮かべて頭を掻いた。
のんきだ。のんきすぎる。この男は何年経ってもどこか楽観的で、ばかで、でもとことん「いい人」のままだった。
私は少しだけいらついた。
「こういうのはさあ、ちゃんと隠してよ」
そう言いながら、目の端で小箱を捕らえる。
喜ぶこと、なんだと思う。
でもどこか気まずいような気恥ずかしいような、この気持ちはなんだろう。
「隠してたよ。隠してたのに、晴果が見つけたんだろ」
「隠してたってあんたねえ、ベッドの下なんて掃除したらすぐばれるって分かるでしょ?しかもベッドの下って・・・やましいもの隠してるわけじゃないんだから」
「大人の玩具だと思った?」
半笑いから小馬鹿にするような笑みに切り替えて、慎は首をかしげて見せる。
腹立たしいやつだ。とことんからかい倒そうとしてくる目の前の男の顔を、私は思いきり張り倒してやった。ぎゃっ、と漫画でしか聞かないような声をあげて慎はおののき、両手で顔を覆った。
「何すんだよお」
情けない声を背中に受けながら、私はキッチンへと立つ。そして流しで手を洗いながら、私は少しだけ泣いた。

掃除をしていて見つけたあの箱を、私は興味本位で開けたのだ。
そして、泣いた。
あの箱の中には、銀の、何の装飾もない指輪が、蛍光灯の光を受けてつやと光りながらおさまっていた。


二人して気まずいまま会話のない夕食を終え、私が後片付けに立つと、慎も「手伝う」と言ってキッチンへやってきた。もうすでに皿洗いをしていた私を見て慎は、
「じゃあ俺拭く係ね」
そう言いながら台拭きを手に取り皿を拭こうとし始めた。私は慌てて止める。
「それは台拭き。お皿用はこっち」
「ええ」慎はめんどくさそうに漏らした。「分かれてるの?」
「あんた、食べこぼしとか拭いた布巾で、洗ったばかりのお皿拭くの?」
そっかあ、と納得の声を漏らし、慎はせっせと皿を拭き始めた。
沈黙が現れる。私は水と皿だけを見つめて一心不乱に皿を洗い、慎に手渡す。いろんな感情を誤魔化したくて。
私の洗うスピードと慎の拭くスピードが釣り合わず、慎の目の前のかごに洗い終わった皿が山積みになってきた頃、慎は沈黙を破った。
「晴果」
「何」
「あの箱の中、見た?」
「見たよ」
そっかあ。また慎は同じ相槌を返す。ちらと慎を見ると、少しだけ伏し目がちで、私は、もう見慣れたはずのこの男の横顔に、どきりとした。
「もう、予測ついてると思うけど」
「うん」
「何て言えばいいのか分かんないけど・・・俺たち、初めて会ってから、もう十年じゃん」
「・・・そうだね」

返事をしてから、やっと気付いた。
先月、私たちは揃って二十六歳になった。
高一――十六歳のあの春、あの寮で出会って、十年。あと数年もしたら、人生の半分を慎と過ごしたことになる。
そんなことを考えながら、私は何気なく辺りを見回した。
ここは、キッチンだ。
「晴果、俺と」
「ちょっと待って」
私ははっと気付いて、慎の言葉を遮った。一番大事なところを遮られた慎はびっくりして、そして怪訝そうな顔で私を見た。奥底には不安の色も見える。
「え、なに」
「・・・ここ、キッチン」
「そうだね?」慎は何事かと言う表情で私を見下ろし続ける。全く気付かない、という感じで。
このひとは、何年経っても大事なところで鈍感だ。
何だかおかしくなってしまって、私は含み笑いのままに、不思議そうな顔をする慎に言った。
「・・・皿拭きながら、言う言葉ですか?」
「え、あ、あああ」


二人がかりで皿を拭き終わってからリビングに戻って、テーブルの上で待ちぼうけをくらっていた小箱に慎が手を伸ばした。
かぱ、と小さく間抜けな音を出して箱は開く。そうっとつまんで、慎は私に向き直った。
「・・・じゃあ、改めて」
どき、と胸が高鳴るのを感じる。私は慎を見上げた。
不意に目が合った。
微妙な間が生まれて、私たちは思わず、顔を見合わせて笑った。

               





いきなり成人設定。
前に別の人物たちでプロポーズ話を書いたなあと思い出し、じゃあこの2人でもやってみようかなあと思って書いてみたやつです(軽い

終わり方はあんまり気に入ってないです。
ページ数の制限があったので無理矢理終わらせた感がみえみえ笑


















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